みかづき通信

本の紹介、『架空の夫と』の読書日記、日々の生活の記録を残しています。

最もやっかいな感情、『恋』について

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 中高生を主人公にした青春恋愛小説が「甘酸っぱい」のであれば、

大人を主人公にした恋愛小説は「胸焼けするほど甘ったるい」。

 ずっと、そんな風に思っていました。

 元々、私はミステリー系の小説が好きで、謎がないと「で?」と言ってしまうタイプの人間です。なので、中高生の主人公なら「こんな青臭い恋愛もありだよね」と思えるけれど、いい大人が、恋に恋しているような甘ったるい恋をしたり、悲劇のヒロインの香りがしたり、まだろっこしい大人ぶった駆け引きがあったりする「ザ★大人の(イタイ)恋愛小説」はどうしても読み進められませんでした。

 

「おうおう、そこまで言うならお前さんはさぞかし恋愛経験豊富なんだろうな」と言われてしまいそうですが、「彼氏? 画面から出てこないよ」と真顔で言える女です。

 

だからなのでしょうかね。私もイタイ大人で、恋愛にはある程度の夢を見ているのでしょう。その夢(理想)から外れる恋愛小説はどうしても受け入れられない……。

 

そんなイタイ大人でも「これが大人の恋愛か!」と思わず鼻息荒くして読み進めた(別にえろいわけじゃないよ)のが、

島本理生さんの『週末は彼女たちのもの』(幻冬舎文庫)です。

 

週末は彼女たちのもの (幻冬舎文庫)

週末は彼女たちのもの (幻冬舎文庫)

 

 

こちらの小説は謎も殺人事件も起きませんが、とても楽しんで読める恋愛小説(連続ショートストーリー) となっております。

一編が、だいたい五ページほどの短いお話を集めたものなのですが、登場人物たちがどこかで繋がっていて、最後には綺麗にまとまっていく構成です。

メインの吉原とミナ(美男美女)の話以外にも周りの恋愛模様が面白く、

少女の夢物語みたいな『再会 sideA』『再会 sideB』には心が震えました。

 

また、後半のある人物の台詞なのですが

「あんなに、好きだったのに。こんなふうに気持ちが終わるなんて想像もしてなかったくらいに」 

 には、『恋』のほろ苦さがめいっぱい詰まっていて、何度も読み返しました。

著者の島本さんもあとがきで書かれていますが、寝る前に一編ずつ読むのに最適な恋愛小説本でした。

 

お次は、絵本で『恋』をテーマにした作品、

桜庭一樹(作)嶽まいこ(絵)『すきなひと』(岩崎書店)です。

 

恋の絵本 (1) すきなひと

恋の絵本 (1) すきなひと

 

 まず、表紙からおわかり頂ける通り、色彩の美しい絵本です。

そこに一筋縄ではいかない桜庭一樹さんの文章が加わることで、

ただの可愛い少女の恋を描いた絵本ではなく、まさに『恋』を体現した

絵本になっています!

こちらのオチ、賛否両論ありそうですが、私は「自分で考えることのできる絵本」という点で、ブクログでも満点評価を付けさせていただきました。

最悪「意味わかんねえよ!」と投げ出してしまいそうな物語なのですが、

よくよく考えてみると「恋って『意味わかんねえよ!』の連続だよね」と

気づかされます。

著者の狙いがどこにあるのかは書いたご本人にしかわかりませんが、

私は、この絵本は間違いなく『恋』をテーマにしているなと感じました。

理屈でどうこうできるものじゃない『恋』を体現したこの絵本、おすすめです!

絵だけ眺めているだけでも「ほう」っとため息が出るほど美しいです。