みかづき通信

本の紹介、『架空の夫と』の読書日記、日々の生活の記録を残しています。

『うた恋い。和歌撰 恋いのうた。』(渡部泰明/著)

 

うた恋い。和歌撰 恋いのうた。

うた恋い。和歌撰 恋いのうた。

 

 

晦日読書マラソン2019のトップバッターは、『うた恋い。』シリーズの監修者による
恋の歌を解説した本。
令和にちなんで話題になった万葉集からもいくつか恋の歌が選出されています。

渡部先生の『手に入らないものを求めるのが恋。手に入ったあとに始まるのが恋愛』

という解釈に、膝を打ちました。打ち過ぎて、膝の皿が割れるかと思った。

『うた恋い。』の杉田圭さんによる短めの漫画が3本入っています。
「えー、3本だけなの?」とがっかりなされるな。
『うた恋い。』で和歌の美しさ、切なさに目覚めた人なら必ず楽しめる
解説書になっている。

例えば『笹の葉は み山もさやに さやげども 我は妹思ふ 別れ来ぬれば』は、
≪山じゅうの笹という笹が、ざわざわと風に吹かれて騒いでいる。
 けれども私の心はただあの子のもとへ。もう二度と逢えないのだから≫
と、わかりやすく現代版に訳されています。

恋の歌なので、切なめな歌が多いのですが、
流罪になった夫を見送らねばならぬ妻の激しい感情を詠った
『君が行く 道の長手を 繰り畳ね 焼き滅ぼさむ 天の火もがも』
≪あなたがこれから行く、遠く長い道のりを、全部この手にたぐり寄せて、
 焼きつくしてしまいたい。天よ、そのための火を私にください≫

や、
藤原定家も大好きで、本歌取りをしている歌
(元ネタのようなもの? うた恋い。一巻で定家が詠っています)
『夏の野の 茂みに咲ける 姫百合の 知らえぬ恋は 苦しきものそ』
≪あなたに知ってもらえない恋は、こんなにも苦しいのです。
 まるで、夏の茂みにひっそりと咲いている姫百合のよう。
 どうか私を探しだしてください≫

など「……超えもい」と天を仰ぎたくなるような恋の歌もあります。


しかも、この本には声優の中井和哉さんと桑島法子さんによる
和歌の朗読CDもついています(現代訳もちゃんと読んでくれる)!
本を読み進めながら、同時に素敵なお声で和歌を読んでもらえるとか
大盤振る舞いだな!

解説も読みやすく、漫画も『うた恋い。』シリーズ同様切なくも美しい物語で
読めば「和歌っておもしろい!」と思わずにはいられないでしょう。