文學界新人賞を受賞した『N/A』(年森瑛・著)を読了する。
この小説は「個人を塗りつぶしてカテゴライズされる」ことを嫌う女の子、まどかの物語。
お試しでお付き合いしている、年上のうみちゃんがツイッターで、まどかのことを写真(顔は写っていないが、見る人が見れば特定されてしまう)つきで「同性愛者のパートナー」として紹介していることに、まどか同様、ゾッとした。
うみちゃん、ネットリテラシーなさすぎだろう、と呆れた。けれど、そんなうみちゃんへの感想もまどかの視点で見ているからで、うみちゃん側の視点でこの物語が語られていたらまったく違う話になっていただろう。
小説とは、主人公の価値観で人間がカテゴライズされていく物語なのかもしれない。
私たちは無意識に、カテゴライズせねば安心できない生き物なのかもしれない。
わからないものをわかった気になることは、恐ろしい。かなり気をつけて自分の思考や価値観を俯瞰しなければ、かんたんに私はこの罠に落ちる。